男性のサラリーマンが、営業している先のお昼に、ご飯を食べ、休憩がてら公園のベンチに腰掛けた。
公園は、さほど大きくなく、鉄棒と、ブランコ、すべり台、砂場とありふれた公園だ。
この日は、梅雨時期なのに久しぶりに天気が良く、何人かの子供が母親に連れられて遊んでいる。
連日の雨のせいで、寒くなったりしたせいか、少し体調がすぐれない。
今日も、あと3件お得意様に回らなければならく、まだお昼だというのに少し疲れていた。
ベンチに座った前の方にブランコがあり、5歳ぐらいだろうか、女の子が乗っている。
ゆ~ら、ゆ~ら、ゆっくりと小さく揺らしていた。
子供は良いな~。
その、のんびりしている光景に心を和ませていた。
ふと、携帯電話に着信やメールが来てないか確認してみる。
視線を携帯電話に向け、着信やメールなど来てない事を確認して視線を戻してみると、さっきまで乗っていた女の子がいない。
ん?
携帯電話を確認する1秒そこらで居なくなるのか?
走って他の場所にでも行ったのだろうか。
ま~そんな事はどうでも良い。
再び、なんとなくブランコに目をやると。
ゆ~ら、ゆ~ら・・・。
と、ブランコが揺れている。
さっきまで乗っててたから、揺れているんだな~。
ゆ~ら、ゆ~ら・・・。
ゆ~ら、ゆ~ら・・・。
ぼ~っと眺めながら、これから回る得意先とどんな商談をしようか考えていた。
ゆ~ら、ゆ~ら・・・。
全く、止まる気配の無いブランコ。
あれ?おかしくないか。
よく見てみると、一定のふり幅で、一定のリズムで揺れ続けている。
この日は、風も穏やかで風で揺れるとは考えにくい。
振動?かと思ったが近くで工事などもされていない。
ゆ~ら、ゆ~ら・・・。
おかしい・・・。
ずっと揺れ続けているブランコに違和感を覚えた。
いったい、この現象はなんなんだろうと。
ぼーっと見ていたのにいつの間にか、凝視していた。
と、瞬間にブランコに乗っている女の子が一瞬にして現れた。
まるで、TVを付けて映像が一瞬で映し出されるように。
えええ!
さっきまで、乗っていて、どこかに行ったのになぜ、いきなり現れるのか。
女の子をよく見てみると、普通の女の子だと思ったのに少し透けている。
顔は少し俯き加減で、少し悲しそうな表情を浮かべている。
もしかして・・。
と思った瞬間に、スーッと薄くなり消えていった。
すると、ゆ~ら、ゆ~らと揺れていたブランコが徐々に揺れるのが小さくなりピタリと止まった。
これは、子供の幽霊だったのだろう。
なぜ、この公園に居るのか。
または、この公園に来たのかは全く分からない。
しかし、怖い感じは全くなかった。
不思議なものを見たな~という感覚だった。
そして、中年のサラリーマンは営業へとその公園を後にした。