深夜の乗客 怪談・怖い話

これは、友達のお父さんがタクシー運転手だった頃に仲間のタクシー運転手から聞いた話だという。

その日は、雨が降りしきるなか、夜勤の仕事をしていた。
客を乗せた帰りの事、髪の長い女性が手を挙げたので止まった。

女性を乗せ「どちらまで行きましょうか?」と問いかけに、女性客は、「森林公園までおねがいします。」と言った。

時計を見ると、1:00を過ぎたあたり。
森林公園までは大体40分程度で行ける。
こんな時間に、何しに行くのだろうか。

夏だとは言え今日は、花火大会もやっていないし、何かイベントが有るという話しも聞いていない。

少し疑問に思いながらも、女性を乗せ向かった。

森林公園に近づてくると、やはり何かイベントなど開催しているような看板なども無く、見渡す限り真っ暗だ。
こんな時間に、なにかおかしい・・・。

「ないかイベントか何かですか?」

「・・・・」

女性は何も答えない。
なんだか、変わったお客さんだな~と思いつつも、こちらも仕事なのでお客様を不快にさせてはいけないと思い、それ以上聞かないようにした。

森林公園に入ると、女性は「丘の頂上あたりの大きな木までおねがいします。」と言った。

これは、もしかすると・・・・と思い当たる節があった。
目的地に着くと女性は消えてるってやつでは無いのか?
その話は。都市伝説的な事で、まさかそんなはずは無いと思いつつ、嫌な予感がした。
しきりに、バックミラーで女性が居るか確認をする。
確かに、髪の長い女性は後部座席に座っている。

目的地に近づくにつれ、やはり嫌な予感は否めず、嫌だな~、怖いな~、と思うようになってきた。
次第に、手に汗を握るようになってきて、嫌な汗がにじむようになっていった。
いや、そんな事は無い。
そう自分に言い聞かせながら、暗闇の中、対向車も無く、人気も無い森林公園の中を進んでいく。

2:00少し前に目的地に着いた。

誰か居る。
居るじゃないか、思い過ごしだったのかもしれないと、少し安心した。

しかし、何か様子がおかしい。
ジーと目を凝らして見てみると、脚が浮いている。

「あっ!」

首吊り自殺だ。
そして、その首吊り自殺している人を良く見ると、女性で髪は長く、後部座席にの乗せている女性だと気が付いた。
「はっ」と思った瞬間に。

「私を見つけてくれてありがとう・・・」

と、女性の声が・・・・。
後ろを振り返るとやはり女性は消えていた。

エンジン音と、ワイパーが動く音、雨音と、時々吹く風に草木がざわざわ・・・ざわざわ・・・としながら首吊りした女性がゆ~ら、ゆ~ら、と風にあおられ揺れていた。
ドライバーは、首吊り自殺した女性が、自分を見つけてほしかったのだと理解した。

その後、警察に連絡するとすぐに駆け付け、事情聴取と受け、事情を説明したが、案外あっさありとしていたのだという。
警察も、たまにこういう案件が有る事を察したのだろう。

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